「稚魚のエサ」で調べると必ずと言って良いほど出てくるブラインシュリンプ。
しかし、いざ商品の説明ページを見てみると、孵化には塩水が必要だったり、エアレーションが必要だったり、卵の殻の分離が必要だったりと手順がとっても複雑そう。
稚魚の育成には必要と分かっていても、複雑な手順のため敬遠する方は多いと思います(私もでしたが・・)
そこで、今回は「専用の孵化器不要、エアレーション不要、卵の殻の分離不要、冬場でも簡単に出来るブラインシュリンプの沸かし方」について紹介したいと思います。
ブラインシュリンプを沸かすには?
テトラ ブラインシュリンプ エッグスの公式のマニュアルですが、これ従うと・・・
ブラインシュリンプの栄養源は熱帯魚の稚魚と同じく、栄養袋である「ヨークサック」によるものです。従いまして、こちら時間とともに消費されますので生まれたてのブラインが一番栄養価が高く、24時間経過するとほぼ栄養価は無くなってしまうと言われています。
つまり、安定的にブラインを稚魚に与えようとすると毎日沸かす必要があるということです。
1回だけなら出来ると思うのですが稚魚育成となると毎日の作業になりますからね。
「とても面倒くさそう。冬場に28℃の水温なんてどうやって維持するのさ?餌やりのたびに塩抜きが必要?う~ん。これはパスだなぁ」ってなってしまうのは仕方ありません。
ちなみに、テトラの説明書には書かれていませんが、孵化のトリガーとして光も必要だそうです。
また、Ph8.0以上のアルカリ性であることが推奨とあります。
参考:https://www.brineshrimpdirect.com/
これらすべての条件を満たすと最高の孵化率を達成できるのでしょうけど、「稚魚に与える分だけ孵化すれば十分じゃないですか?」っていう考えでも良ければ「皿式」という方式はとても魅力的です。
そこで、ブラインシュリンプの孵化条件を満たし、私の様なずぼら人間でも苦にならない「皿式」について紹介していと思います。
【皿式】ブラインシュリンプを沸かす
皿式のざっくりした流れは以下のとおりです。
指定濃度の塩水を作る
ブラインシュリンプは産地によって適切な塩分濃度が若干異なるようですので、説明書に従い適切な塩分濃度の塩水を作ります。
テトラの場合2%と指定されているのでそれに従い、カルキ抜きした水に2%の塩を加えます。この容器は2Lなので40gの塩が必要となります。
皿式では使用する塩水は少量のため、大きめの容器などでまとめて作っておくことで、以下の手間を削減することが出来ます。
ただし、あまり古くならないよう、一週間で使い切るくらいが良いでしょう。
塩水をトレーに1~2cmの水深になるように入れる
百均でトレーを買ってもいいのですが、我が家の場合「子供の使わなくなったお弁当箱」ですw
容器を割り箸などで区切り、割り箸が浸かりきらない量の塩水を入れます。
お弁当箱のような広い容器を使うことで空気に触れる面積が広くなり、かつ水深を浅く(水深1~2cm)することで大気圧により水の中に十分な酸素が溶け込むことが出来るようになります。
広い容器+浅く塩水を張るのがポイントで、これにより溶存酸素が十分確保できるためエアレーションが不要となります。
ブラインシュリンプの卵をトレーに入れる
割り箸で区切った片方にだけ、ブラインシュリンプの卵を投入します
割り箸で区切ることで、
・奥側には孵化しなかった卵と孵化後の卵の殻が残る
・手前には孵化したブラインシュリンプが集まる
上記を簡単に実現するための下準備となります。
ちなみに、容器は何でも良いと思います。百均のトレー、豆腐の入れ物、お寿司のパックなども代用可能です。
ちなみに、豆腐の入れ物は結構しっかりしてるのでオススメです。
【2023/1/22追記】
ストローで浮き輪を作ると、蒸発で水位が変わっても追従できるのでこのやり方も良いと思います。
水温を28℃程度でキープできるようにする
これが冬場だと結構ネックになると思います。
水槽に浮かべるという方法もあるようなのですが、水温と同じなので精々25~26℃くらいにしかなりません。さらに、我が家のグラミー達はよく水面ジャンプをするので、浮かべた弁当箱をひっくり返されそうな気がします。
ということで水槽に浮かべる方式は却下で、別の方法を検討してみました。
その方法がこれです。吊り下げ式照明の下にトレーを配置するというものです。
冬場(12月中旬)昼間の、我が家の室温は20℃前後です。
しかし、LED照明の下であれば27℃くらいの温度になります。
このLED照明の発熱に温められるおかげで、水温は24℃を維持できます。
28℃が理想ですが、このくらいの温度があれば十分に孵化してくれます。28℃に近づけたければ、吊り下げ照明の高さを下げればいいでしょう。
もちろん、常時点灯する必要もありません。普段と同じように1日7時間など点灯するだけでOKです。
LEDライト下に配置することで、ブラインシュリンプ孵化の条件である水温だけでなく、光量についても満たすことが出来、まさに一石二鳥です。
アクロ トライアングルLEDについては、以下の記事で紹介しています。
約24時間後に孵化が完了
夜間は照明が消えることで水温も20℃以下になるため、28℃に比べ孵化にかかる時間が長くなると思いますが、すべてが孵化しないということはありません。
(自然界でも常に温度が28℃なんて事ありませんからね)
24時間後には一部のブラインシュリンプはちゃんと孵化します。朝に仕込めば、翌日の朝には稚魚に与えることが出来ます。
24時間経過後も時間差で生まれてくる+ブラインは生まれた直後が一番栄養がある。
と考えれば時間差で生まれることに旨味もあるため、別に28℃にそこまで拘る必要はないでしょう。
【皿式】ブラインシュリンプを与える
ブラインシュリンプを集める
ブラインシュリンプは光に集まる習性(正の走行性)がありますので、これを利用して1箇所に集めます。
とは言え、毎回ペンライト照らすなんて面倒くさい。そこでもっと簡単な方法としてこれです。
「孵化が完了した容器をダンボールなどで覆っておく」これだけです。ここでも吊り下げ式照明が大活躍します。ブラインは一番明るいところに集まってくるので上の写真であれば青枠の部分に大凡集結します。
さらに「塩水をトレーに1~2cmの水深になるように入れる」で、割り箸で区切るという工夫を加えたため、孵化したブラインシュリンプだけが集まります。
(孵化しなかった卵と孵化後の卵の殻は奥に残ります)
ブラインシュリンプの塩抜き
皿式を採用されている方の中には、ブラインシュリンプをスポイトで吸ってそのまま与えるという方もいるようです。
確かに水量に対して、極微量の塩水なので気にするほどではないのかも知れません。
ただ、1日4回の餌やりの度に少量とはいえ塩が本水槽に入るのは、生体や水草への影響含めて気になります。
ということでお茶パックを使って、ブラインシュリンプの塩抜きをしましょう。
コーヒーフィルターなどでも出来ると思いますが、お茶パックは小さいのでやりやすいです。
お茶パックこの部分を使い、塩抜きをしていきます。
一度教えれば小学生でも出来ましたので、実際の手順を見せてもらいましょう。
光に集まっているブラインシュリンプをスポイトで吸い出します。
お掃除用のスポイトが大活躍します。
吸い出したブラインシュリンプをお茶パックに入れます。
ブラインが入っていた容器に水が落ちるようにしてください。
このオレンジ色の物体がブラインシュリンプです。
ここから更に塩抜きをしていきます。
本水槽から水を少しスポイトで吸います。
本水槽の水をブラインシュリンプにかけることで、塩抜きが出来ます。
ブラインが入っていた容器に水が落ちるようにしてください。
ブライン容器の塩分濃度が多少薄まりますが、蒸発して塩分濃度は濃くなっているはずなので気にするほどではないでしょう。
塩抜きが終わったら、本水槽にお茶パックの先端を少しだけ漬けます。
そして、スポイトで吸うことで塩抜きされたブラインシュリンプを採集できます。
後はこのブラインシュリンプを・・・
サテライト水槽に噴射すればOKです。
光に集まる習性があるので、サテライト水槽の位置によっては排出口が一番明るいということもあるでしょう。
その場合、ダンボールなどでカバーをしてブラインシュリンプが排水口から本水槽へ脱走しないようにしましょう。
後は稚魚がパクパク食べるのを観察するだけで、慣れれば超簡単で1分も掛かりません。
お茶パックも再利用可能です(気になるなら1週間毎に新しくすれば良いと思います)
ブラインの卵の殻を分離するためのキットを使い、加圧蛇口シャワーで洗い流すという方法もあるようですが、これやるとブラインがかなり弱ってしまったり、死んでしまったりするようです。
ですが、今回紹介したお茶パック方式であれば塩水も落としつつ、元気いっぱいのブラインを稚魚に与えることが出来ますよ。
ブラインシュリンプのローテーション
毎日栄養たっぷりのブラインシュリンプを稚魚に与えるためには、複数容器でローテーションする必要があります。
私は3つの容器を用意し、以下のようにローテーションしています。
ブラインシュリンプは孵化直後が一番栄養価が高いため、稚魚には本日孵化したブラインシュリンプを与えています。
一方、前日孵化したブラインシュリンプは栄養価があまりないのですが、親魚達はみんな美味しそうに食べるので親魚達におやつとしてあげています。
(そのまま捨てるのはもったいないですからね・・)
特に小型魚には人気のようです。コリドラスもブラインシュリンプをあげるようにしてから、前に出てくる機会が増えたように思います。
この砂地めがけて発射してるので、ここで待機するのが一番賢いですねw
複数容器でローテーションする必要がありますが、容器の洗浄に関しても「皿式」であれば水でちゃちゃっと流すだけなので簡単です。
おまけ:ブラインシュリンプの生息地
ブラインシュリンプの生息地として、北米ではモノレイク、ソーダレイク、グレートソルトレイクが有名だそうです。奇しくもブログ管理人すべて視察済みなので、紹介しておきたいと思います。
Brine Shrimp (scientific name Artemia franciscana) are known practically all over the world. They are found widely in North America. They occur south of San Francisco in places where salt water evaporates naturally along the California coast: in Mono and Soda Lakes in California; and in the Great Salt Lake, Utah.
引用:Brine Shrimp Direct
モノレイク
アメリカ、カリフォルニア州にあるモノレイクという塩湖です。カルシウムを多く含む湖底からの淡水の湧水と、炭酸塩(重曹のようなもの)を多く含む湖水との相互作用によって形成された炭酸カルシウム(石灰岩)の尖塔である「トゥーファ・タワー」で有名です。
モノレイクの塩分濃度はなんと海水の2.5倍!
この事実から推察するに、塩分濃度8.5%程度までブラインシュリンプは生息できるということですね。
もちろんメーカーで孵化テストして、一番成績の良かった塩分濃度が2%ってことなんでしょう。けれども、その気になればブラインシュリンプは8%の塩分濃度でも孵化できちゃうんでしょう。
ソーダレイク
続いてソーダレイクです。こちらもカリフォルニア州、カリッツォ・プレイン国定公園にひっそりと佇む塩湖です。
私が訪問した際には完全に干上がっていたように見えます。こんな乾燥した環境からでも復活できるなんて、ブラインシュリンプ耐久卵の本質が垣間見れた気がします。
グレートソルトレイク
ソルトレイクシティは冬季オリンピックで有名な街ですね。そのソルトレイクシティの名前の由来になっているグレートソルトレイク(大塩湖)もブラインシュリンプの生息地として有名です。
ちなみにグレートソルトレイクの塩分濃度も8%以上だそうです。
塩湖はどこもそうなのですが、遠くから見る分にはきれいな湖でも近づくと湖面いっぱい、びしーっと集まった小さいハエがいます。そして鼻をつくような、何かが腐ったような悪臭がします。
遠くから写真だけを撮ることをおすすめします。。
まとめ
さて、話が脱線しましたが冬でも出来る超簡単なブラインシュリンプの沸かし方「皿式」についてでした。
この皿式を使うことで、最初に挙げた問題点をほとんど解決出来ていると思いますが、いかがでしょうか?
毎日作っても全然手間に感じません。
親魚たちも喜んで食べてくれるので、毎日多めに作っておやつとしてあげたくなるほどです。
そんな冬場でも何ら手間の変わらない「皿式」の紹介でした。参考になれば幸いです。
最後にこれを実現するために必要な吊り下げ式ライトの紹介をしておきます。
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